2010年7月24日土曜日

打ち水「サギ」大作戦

この週末、全国紙に「打ち水大作戦2010」の全面広告が相次いで掲載された。事務局は「日本水フォーラム」いままで下町の片隅で行われてきたこじんまりした企画が一挙に国交省、環境省、東京都、政府環境局の後援を受け、カネをかけた大々的な作戦に変貌した。一体何があったのだろうか。おそらく協賛団体に名前を連ねている建設コンサルタント会社のひとたちはほぞを噛む思いをしているだろう。誇大妄想としか言いようのない企画に巻き込まれたことにだ。そもそも打ち水で真夏の気温を2℃下げることができると思うこと自体ばかげている。計算は簡単なことだ。東京都全体の面積×地表から少なくとも10mの大気を2℃下げるための必要エネルギーはいくらになるか、建物、歩道の放射熱も計算にいれて。新米の建設コンサルタントにでもできる計算だ。しかし主催者はTV放映でつまらぬ詐欺実験をしてくれた。サーモグラフィで舗道のアスファルトの表面温度を測定したのだ。ほら10℃下がりましたと。たしかに表面は冷えるがその1㎝下は高熱のまま、散水をやめればたちまち元どおりになる。詐欺だ。TV実験では元の気温に戻るのに30分もかからなかった。表面の温度しか測定できないサーモグラフィを使う実験は99%詐欺と思った方がよい。装置が高ければ高いほどひとを騙せる。安い方法はいくらでもある。この場合、実験効果を見極める簡単な方法は、地上10mに温度計を置いて時間変化を見ればよい。桶一杯の水ではたぶん何の変化もないだろう。「おんだんかなんてとまらなくてもいいから あなたのなみだをとめられるなら つめたくなったこころをあたためられるなら みずをもっておもてにでよう ひとはひとりじゃいられないから ひとりってことはありえないようにできているから だれかといっしょにいっせいに ひとりじゃないから うちみずだいさくせん」これが1億円以上もかけた広告コピーのことば。何が言いたいのかさっぱりわからない。はじめから温暖化を止める気がないのは分かるが。情緒的なことばの羅列で最後は打ち水を一緒にやりましょうと締めくくる。ムダな労力とおカネの「打ち水大作戦」は8月23日までの1カ月つづく。日本の環境政策の貧弱さと非科学性の象徴として。

2010年7月17日土曜日

熱くて哀しき綱吉

動物愛護法に関しては英国よりも日本や朝鮮の方が先進国である。殺生戒がある仏教の強い影響のせいなのだろうか、6世紀には動物殺生禁止令が百済、新羅、大和で施行されている。
ところで貞享2年(1685年)、第4代徳川将軍綱吉は最初の生類憐みとなる『江戸町触』を出した。以後25年間にわたり計135回この『町触れ』は出された。動機は巷間いろいろと言われているが、どうもこの将軍の特異な性格に起因するようだ。ともかくこの将軍は当時のことばで言う「まめやか」なのだ。その「まめやか」振りは度外れていた。
『生類憐みの令』の目的は当時の人心の精神改造だった。儒学の「仁のこころ」でいまだ残る戦国のすさんだ気風の一掃を図ったのであるが、やりかたがよくない、いちいち箸の上げ下げに口を出すようなやりかたであった。
第1回目は「先日も申し渡したように、御なり遊ばされる道筋に犬や猫が出てきても苦しゅうないから、どこの御なりなされる場合でも犬猫をつないでおかなくてよいぞ」(以下、『黄門さまと犬公方』の訳を引用)、『町触れ』は矢継ぎ早に出てくる。犬どうしが喧嘩をしたときには怪我をさせぬように水をかけて引き分けよ』ここで、疑心暗鬼の町人どもは、「おッお~」ときた。ピンと生来の魂にうったえるものを感じたのだ。すかさず、町中に「水わけ水」と書いた桶とひしゃくを置き、「犬」という字を紋どころにした揃いの羽織を番人着せ警備させたのだ。おちょくりである。しかし将軍さまは軽く受け流すことができぬ性格ゆえ「そこまでしなくてもよいぞ、ただし犬は粗末にせずにいたわってやるのだぞ」と丁寧に対応している。以後ひとつひとつ「まめやか」に答えていく。この調子で、25年間に亘る泥沼の闘いにはいっていった。ついには町中の犬は飼い犬も含めて江戸中から一掃された。殺したのではない。すべて幕府直営の犬屋敷きに収容したのだ。江戸近隣に数か所つくられたが、そのひとつの中野の犬屋敷は30万坪、ゴルフ場に匹敵する広さであった。ばかばかしさも極まれりと思うのだが真面目な人には通じない。こうした泥沼は綱吉の死をもってあっけなく終了する。後継の将軍家宣は死の枕辺で「生類憐みの令」の即時廃止を決めたのだ。所詮養子である、義父の切なる継続の願いなど聞く耳をもたなかった。ここで考える。誰よりも熱く懸命に儒学の理想に燃えた綱吉の一生であったが、無念があるとすれば、もうすこし子づくりに励めばよかったのだ。不肖の養子にちゃぶ台返しをされずに済んだのである。

2010年7月12日月曜日

猫いじめの動物愛護国イギリス

スコッチ・コリー、スコッチ・テリアと見た目も性格もよい好印象の犬に対してどうも英国では「猫」は歩が悪いようだ。そもそも英国産の猫で見栄えのする猫はいない。美的にも性格的にも猫は評価が低い。英国ウォッチャーの定説では、猫の性格と英国人の性格とは相性がよくないことになっている。原因は両方にある。両方とも性格が悪い。まず英国人の性格の悪さについて述べてみよう。同じ島国の日本にも似たところがあるからあまり強く言えないが、英国人の性格の最大の欠点は弱い者いじめが大好きなのである。今回は動物いじめの話だけに限るが、動物虐待禁止法ができた1835年まで、イギリスの下層階級は「牛いじめ」「熊いじめ」「雄鶏いじめ」などの「動物いじめ」を娯楽にしていた。上流階級も負けてはいない。「ライオンいじめ」「狐いじめ」「兎いじめ」を娯楽とスポーツにしていた。これには長~い、長~い歴史がある。いまだに英国貴族はその習慣が抜けていないが。英国には「猫いじめ」はないが、いじめの代わりに、英国人はいちばん頻繁に、いちばん熱心に猫を中傷してきた。その中傷を箇条書きにすると、猫は①領地の生物を密猟する②小型だが野生の猛獣と憎いほど似ている③外見を変えようとする繁殖家に抵抗する。つまり相手を勝手に選びSEXする。④態度が悪い。主人を好きなのか、嫌いなのか、信用しているのか、いないのかがわからない。つまり可愛気がない。結論としては、「猫というのは著しく劣った家事使用人で、お上品で官能的快楽に溺れ、もっと気高い性質にかけているために、高貴で寛大な人の共感が得られない」と言うわけだ。でも、これはよく考えると猫ではなく英国婦人のことではないかと思う。ご婦人がたの前で言えないから「猫」に託して言ったのではないか。英国の男たちの情けない姿が垣間見えてしまった。日本も似たり寄ったりだと言われれば返すことばはないが。だから、御同輩!猫いじめは止めましょうや、猫は化けて出ますから、負けるが勝ちですよ。

2010年7月8日木曜日

クロマグロの危機

「大西洋クロマグロを、壊滅的に減らした一番の要因は、産卵場での巻き網操業である。産卵場で産卵群を巻き網で一網打尽にする破滅的な漁法が日本でも2004年から開始され、日本海のクロマグロ産卵群が激減している。実は、日本のクロマグロは、タイセイヨウクロマグロと同様に、危機的状況にあるのだ」と、鳥取県境港市の漁師、勝川俊男氏はブログで訴えている。現場の漁師が身近に感じているようにクロマグロ資源の枯渇は著しい。大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)」が前年比40%減の漁獲割当を決定したが「カツオを含む主要マグロ類の資源回復には到底達しない」(小松正之、元水産庁漁業交渉菅、政策研究大学院大学教授)、状況にはやりきれない思いがする。
以前は、マグロ漁業の主流は延縄漁法でマグロを釣り上げていた。しかし80年代からはえ縄漁法の20~30倍の漁獲能力のある巻き網漁法が欧米を中心に導入されるようになった。結果ははえ縄と他の漁法の漁獲量は横ばいだが一網打尽で大量漁獲する巻き網は50万tから270万tへと5倍に増えた。さらに養殖用の稚魚を獲るために、ブログにあるように産卵場で巻き網操業をした。ここで大きく間違えたのだ。産卵群を巻き網で獲るとは、賢明な日本の漁師のやるべきことではない。何に血迷ったのか。自分で自分の首を絞めたとしか思えない。確かに、クロマグロは一回の産卵で一千数百万個の卵を産むが数は無限ではない。卵を獲りつくせば成魚の数がどうなるかは言わずもがなだ。中西部太平洋のクロマグロはこの50年間で3分の1になった。もっと心配なことは、日本海域の産卵場の巻き網が2004年から始まったことだ。卵は無い。深刻な資源枯渇の事態もこれからは覚悟しなくてはならないだろう。養殖に卵が必要なのは言うまでもない。

2010年7月5日月曜日

WWFのおかしな話

パンダ印の世界自然基金の話です。略称ではWWFと言います。WWFのホームページを開きますといきなり寄付金の記事が出てきて、それが延々と続きます。それで、かつてお会いしたWWFのセールスマンのことを思い出しました。彼は自動車のセールスから転職してきたひとで主に法人を対象にして廻って歩いていました。寄付金を集める仕事で歩合制ですと大変そうな顔で言いました。法人は寄付金を払うと例のパンダマークが貰えます、寄付金が定額なのは公平性を担保するためです。でもそれって、昔マルティン・ルターが怒って宗教改革を始める原因になった免罪符と同じでしょ?企業の資格審査をやっているの?たぶんやっていると思います。で、わたしは少し調べてみましたが、いやはや突っ込みどころ満載の組織でした。環境破壊企業を環境優良企業に仕立てあげる「グリーンウォッシング(みどりの洗濯、マネーロンダリングの環境版)」の例が他の環境NGOからたくさん指摘されていました。例えば、インドのボパール化学工場のユニオンカーバイド、バルディーズ号原油流出事故のエクソンはWWFの幹部ゆえに擁護していました。
あの『タイタニック』のディカプリオ氏、トラ狩り禁止運動をWWFに訴えたそうです。それは魚屋にさかなを殺すなと言うようなものです。WWFの創始者のひとり、名誉会長のエディンバラ公フィリップは現地人が行う狩猟は野蛮な行為であるが上流階級が行う狩猟は崇高なスポーツであるといって、いまでもトラ狩りを続けています。
金持ちが資金を出し合ってやるギャンブル、例えばF1レースなどはF1マフィアが仕切ります。まぐろ養殖ももしかしたらマフィアが仕切っているかもしりません。マフィアが仕切っているようなところには決して「シー・シェパード」や「グリーン・ピース」は手を出しません。今後の成り行きを見て行きましょう。

2010年7月1日木曜日

ヒ素と塩の関係

日本は火山国の故にヒ素混入の危険性は全国あまねく存在する。日本の温泉水の多くが許容摂取量をこえるヒ素を含んでいる。ヒ素は古代から毒殺に用いられたほどの毒性があるもので、温泉水を常用すると慢性ヒ素中毒になる。「50歳代の女性が、胃腸病に効くと言われている秋田県のトコロ温泉の温泉水を飲み始め数カ月して黒褐色の色素が全身に網の目状に沈着、手掌、足底の皮膚に角化を生じ、慢性ヒ素中毒と診断された。患者が飲んでいた温泉水から基準値の1000倍のヒ素が検出された」(『健康食 品中毒百科』丸善)という例は決して珍しいことではない。
わたしの親しい土壌汚染除去業者から聞いた話だが、ある有名な自然塩メーカーの製造した藻塩から多量のヒ素が検出されたというのだ。原因究明と汚染された塩の処置がその業者に依頼された。かかる事態の背景には、健康に気を使うヒトたちが(砂糖の場合も同じであるが)、精製されて真っ白になったものを好まない。精製されたものは毒であるという馬鹿げた信念を持つ健康食品関係者に影響されて不純物あるいは有害なものがはいったものを好む傾向がある。まじめに精製すれば起きない問題である。
原因はすぐに分かった。藻塩の藻に原因があったのだ。ひじきとか藻には海中に含まれるヒ素を濃縮する性質がある。ひじきを毎日1.25g1週間食べると50kgのひとで週間耐容摂取量を越すほどである。すなわち多量のヒ素が藻から塩に移行したわけだ。以後ヒ素に汚染されていない藻が使われた。
もしあなたが浄化されていない濁った水を飲めと言われ飲むだろうか、温泉水を飲んで慢性ヒ素中毒になった女性の例がある。白くない塩や砂糖にはごみが入っていると思った方がよい。健康のために死んではならぬ。